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老境の寂寞と60年代ポップアートが交錯~映画「僕とカミンスキーの旅」 [映画時評]

老境の寂寞と60年代ポップアートが交錯

~映画「僕とカミンスキーの旅」

 

 こんな面白い映画を見たのは久しぶりだ。悲喜劇のようであり、ロードムービーのようであり、そしてそのどちらにもはまらない。カミンスキーは実在の人物のようであり(ということは実在の人物ではないのだが)、老境の寂寞と孤独感はずしりと重く、しかしテンポはよく、ところどころに気の利いた蘊蓄あるセリフが散りばめられている。

 カミンスキー(イエスパー・クリステンセン)は1960年代、アンディ・ウォーホルらとともに一世を風靡した盲目?の画家である。マチスの弟子であり、ピカソの友人でもある。しかし、今はスイスの山中で隠遁生活を送っている。

 売れない美術評論家ゼバスティアン(ダニエル・ブリュール)はヒトヤマあてようとカミンスキーの評伝を書くべくアタックする。カミンスキーの娘ミリアム(アミラ・カサール)にも軽くあしらわれ、どことなく招かれざる客であるゼバスティアンだが、なんとか元画家の懐に飛び込む。カミンスキーには若き日の恋人テレーゼ(ジェラルディン・チャップリン)がいた。彼女に会うため、ゼバスティアンとカミンスキーのドタバタ道中が始まる。

 しかし、やっと会ったテレーゼは昔のテレーゼではなかった。同居人と暮らし、カミンスキーにけんもほろろ(というか、彼女には彼女の「日常」が既にあった)の対応を取る。失意のカミンスキーは「海を見たい」と言い、二人で海岸を訪れる。

 60年代のポップアートの「空気」があちこちに漂い、絵画と映画の融合が試みられて観るものを心地よくさせる。カミンスキーとテレーゼの関係が、ミリアムによって既に「清算」されていることなど、ちょっと辛口に美術界の裏側を見せて興味深い。

 蘊蓄あるセリフといえば、こんなのがあった。達磨大師の弟子が「私にはもう何も捨てるものがありません」というと大師は「その、捨てるものがないという執着を捨てなさい」と諭す。カミンスキーがゼバスティアンに語った寓話である。二人の関係を暗示したようで奥は深そうだが、実際何を言っているのかはよく分からない。ただ、この伏線に沿ってセバスティアンは取材で得たノート、音声テープすべてを海に捨て去る。

 うーむ、やっぱり深い。

 監督は「グッバイ、レーニン」のヴォルフガング・ベッカー、秀逸の原作はダニエル・ケールマン。2015年、ドイツ、ベルギー合作。


カミンスキー.jpg

 


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