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安倍政治はどこから来たか~濫読日記 [濫読日記]

安倍政治はどこから来たか~濫読日記


「偽りの保守・安倍晋三の正体」(対談 岸井成格・佐高信)

岸井・佐高.jpg 知られたことだが、岸井と佐高は慶応大法学部の同期生である。一方は保守本流を取材してきた毎日新聞の政治記者、一方は反骨・在野の評論家である。この二人が、安倍政権のいびつさと背後にある保守政治の変容ぶりを語った。
 佐高は「はじめに」で、戦後自民党の系譜を「国権派」と「民権派」の二つの流れに分類する。前者は岸信介、福田赳夫、小泉純一郎、安倍晋三、後者は石橋湛山、池田勇人、河野洋平、加藤紘一の流れである。色分けの基準は国ありきか民ありきかで、佐高は当然のこととして民権派に近い考えを示すが、岸井は必ずしもこれに同調していない。最も大きな要因は田中角栄に対する評価であろう。言い換えれば、「ダーティーなハト派」を認めるかどうか。この点について、佐高はこういう言い方をしている。「金で済む話なら、それはまだ見逃せる(略)。思想の統制や戦争への道につながっているわけではない」。これに岸井は「私はうなずかないけれど」と応じている。
 佐高が、とりあえず戦争やファシズムへと導く政治家でない限り、まだ評価できる、とするのに対して岸井は、金権政治そのものはやはり批判すべきだといっている。ただ、岸井もまた、政治家育成塾としての派閥の効用は認めている。
 全体の骨格をみると、冒頭に「安倍政権のメディア支配」を置き、続いて「自民党と創価学会」の関係を分析、さらに外交・安保にみる保守の知恵をこれまでの足取りからたどり、田中角栄論、吉田茂論、派閥の功罪と、オーソドックスと思える展開だ。最後に「安倍独裁」の正体を浮き彫りにする。安倍政権とメディアの構図から議論に入ったのは「NEWS23」のアンカーだった岸井が一部勢力から批判を浴び、降板に至った経緯を念頭に置いたからであろう。
 これらのうち、「自民と創価学会」は佐高の関心の赴くところでもあり、深く突っ込んでいる。まず佐高が、公明を抱き込んだ者が自民を支配するという構図を野中広務、菅義偉を例に挙げて明らかにする。そのうえで宏池会、清和会、経世会という三極構造の中での調整役・経世会の分裂が保守本流の混乱を招いたとする。保利茂、椎名悦三郎に見られた保守本流の絶妙なバランス感覚がなくなったというのである。これに加えて、自社さ政権で村山富市首相退陣を受けて政権を目指さなかった河野洋平、反乱の腰砕けというオウンゴールをした加藤紘一といったリベラル派の「弱さ」もまた大きいという。こうしたことが重なって今日の安倍政権の懐浅く強権的な政治体制が出現したということであろう。
 もちろん、中選挙区から小選挙区へという選挙制度の変化も見逃せない。「派閥の弊害」解消を狙った改革が、制度的に党内一極の独裁体制とポピュリズムの政治風土を呼んだのである。
 岸井が、野中と菅の政治手法の比較論を述べているのがとても面白い。情の野中に対するカネと合理主義の菅という構図である。おそらくこの部分は、かつての保守政治と現在の安倍政治の違いを解明し、安倍政治の根底的批判の糸口になると思われる。


「偽りの保守・安倍晋三の正体」は講談社α新書、800円(税別)。初版第1刷は2016620日。


偽りの保守・安倍晋三の正体 (講談社+α新書)

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/06/20
  • メディア: Kindle版

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BUN

岸井は、ニュース番組で時々見る。佐高信はよく分からないが時々読む。岸井は番組で「地球の温暖化は待ったなし」とか言ってた。あんまり調べない人じゃない?
by BUN (2016-08-16 23:09) 

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