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現下の政治を整理するための好著~濫読日記 [濫読日記]

現下の政治を整理するための好著~濫読日記

 

「自民党―『一強』の実像」(中北浩爾著)

 

 森友学園疑惑、加計学園疑惑と、安倍晋三政権の腐敗が露呈している。根幹には、「一強」ぶりが際立つ官邸に対して政官の行き過ぎた忖度があると思われる。では、官邸の一強体制はどのように出来上がったのか。それを考えるうえで参考になる書である。それは同時に、現下の政治状況を整理するための、最適な一冊でもある。

 全体を俯瞰すると派閥、政策決定プロセス、国政選挙、友好団体の変化など、自民党をめぐる近年の変化のほぼ全体像をとらえている。その中で最も決定的な要因は、政治とカネ批判に対応した選挙制度改革である。それに加え、政策決定を官邸が積極的に主導したことと、内閣人事局設置による官僚支配が、官邸の立場を強化させたといえる。

 衆院が中選挙区から小選挙区へと変わったことで党公認が中央に一本化され、まず派閥が弱体化した。この変化は族議員の弱体化を招き、政策決定における官邸の強化につながった。いわゆる「政治とカネ」批判を受け、政治資金の流れも一本化された。かつてはカネとポストの配分が派閥の機能といわれたが、もはやどちらも、派閥とは無縁となった。こうして派閥は単なる人的ネットワークになった。かつて政治の悪弊とみなされた派閥は機能のほとんどを失ったが、そのことが官邸の機能強化につながったのである。

 小選挙区は定数1だから、理論上有権者の半数を確保しないと当選できない。現在の自民党の組織票だけでは議席確保がおぼつかないので浮動票に頼らざるを得ない。まさしく、制度が変わった1996年以来、2005年の小泉郵政選挙、2009年の民主党政権奪還選挙、その後の自民党復活と第三極躍進選挙と、浮動票が政権のありようを決めてきた。

 ただ、安倍政権が復活した2012年の衆院選以来、自民党の絶対得票率はけっして高くはない。ここ5年間は、自民が勝つというより野党が負ける選挙が続いているといったほうが正しいだろう。その中で自民の勝因を分析すれば、地方の組織票が比較的安定していること、都市の与党票をまとめる公明の組織的バックアップが効果的であることが挙げられよう。

 現在、森友、加計学園問題への対応や強引な国会運営をめぐって世論調査の内閣支持率は軒並み激減、その中で「支持政党なし」が急増している。7月7~10日の時事通信調査で支持は30%の大台を割り(29.9%)、不支持48.6%、「支持政党なし」は実に65.3%に達している。これは民主党が政権を奪取した2009年と似ており、新たな政治的枠組みを待望する有権者心理を表している。

 小泉政権は「古い自民党をぶっ壊す」と連呼して政権につき、郵政選挙では改革派対抵抗勢力という構図を作り上げた。加計学園問題で安倍政権は構造改革を推進する勢力と抵抗勢力という構図を作ろうとしているが、「首相発言を信用できない」とする声が多くあり(時事調査では67.3%)、目論見は成功していない。

 では、今後の政治地図はどうなるか。中北氏が指摘するように、安倍政権の特徴は小泉政権から引き継いだ新自由主義路線と、民主党政権時代の野党体験を踏まえた右傾化路線だった。しかし、おそらく安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などに見られる安倍政権の路線に、多くの国民は辟易としている。深刻化する貧困率など新自由主義路線にも懸念を抱いている。これらに対する国民の思いを受け止める新政党が登場すれば、間違いなく国政に風が吹くだろう。その条件は整いつつある。一方で自民党内を見渡せば、弱体化したといってもなお息づく派閥間力学の中で、旧清和会系の小泉・安倍政権に政策的違和感を抱き続けた旧宏池会系(岸田派、麻生派)、旧経世会系(額賀派)がどう動くかも、今後の新地図に影響しそうだ。

 中央新書、880円(税別)。


自民党―「一強」の実像 (中公新書)

自民党―「一強」の実像 (中公新書)

  • 作者: 中北 浩爾
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/04/19
  • メディア: 新書
 

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