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アメリカの衰亡~日本は自立すべき時 [社会時評]

アメリカの衰亡~日本は自立すべき時

 「帝国以後」(E・トッド著)を読んで

 帝国以後.jpg ・トランプ政権の意味~「国民国家」への欲望
 20171月、米トランプ政権がスタートした。滑り出しは、お世辞にも順調とはいえない。世界各国からだけでなく、米国内からも厳しい批判を浴びている。代表的なものは、中東7カ国からの入国禁止をうたった大統領令であった。幸い、というべきだろう。この大統領令は司法の手で止められているが、ほかにも、日々の発言に極端な保護貿易の主張や移民、人種への蔑視がにじみ、危うさをぬぐいされない。
 なぜ、トランプ大統領はこんな発言を繰り返すのか。一つには、第2次大戦後、世界が米国にかぶせた「例外主義の国」、すなわち覇権国家というマントを脱ぎ捨てたいという隠しようもない欲望があるためではないか。一見粗雑なトランプ発言を「普通の国民国家になりたい」という底意を意識したうえで聞けば、かなり理解できる部分がある。先ごろ問題になった、安保をめぐる対日批判も「特別な役割を負わされた米国がこれだけ苦労しているのに、なぜ日本はただの国民国家であり続けるのか」という文脈で理解すれば、かなりの部分のみこめる。念のため断っておけば、これはトランプ発言を擁護するという意味ではない。

  ・米国は世界のお荷物~パックスアメリカーナ終わり
 E・トッドの「帝国以後」は、2003年に刊行された。米同時多発テロからアフガン戦争を経て米国がイラク戦争にのめりこんだのが2003年であった。つまり、イラク開戦とほぼ同時期に刊行された。この書の冒頭付近には、こんな文章がある。
 ――アメリカ合衆国は現在、世界にとって問題となりつつある。これまでわれわれはとかくアメリカ合衆国が問題の解答だと考えるのに慣れてきた。
 トッドは続けて、しかしいまや米国は、「不安定と紛争」を維持し「国際的秩序崩壊の要因としての様相」を強めようとしている。そして、副次的重要性しか持たないいくつかの国を「悪の枢軸」と呼び、世界に同調を求めている、と言う。もちろん、ここにはイラクが念頭にある。
 トランプ発言は、もはやそうした立場さえも捨て去って「ただの国」になりたいといっているようだ。
 フランスの人口学者であるトッドはここで、アメリカという国のアウトラインを追う。18世紀、英国との戦争の末に独立。以来、ニューフロンティアと移民の国として欧州からヒトとカネが流入し発展する。一時モンロー主義の国としてヨーロッパへの不干渉を唱えるが、第1次大戦では途中から参戦。第2次大戦も、「パールハーバー」によって対日戦争の先端を開くが、もともとヨーロッパを舞台にした独ソ戦では積極的ではなかった。本格的な参戦は、1944年のノルマンディー上陸作戦からと思われる。トッドも書いているが、ナチスからヨーロッパを解放したのはソ連だった。
 しかし戦後、ソ連が世界の覇権をうかがい、一方で戦禍のため疲弊しきったヨーロッパは、ソ連に対抗するための「覇権国家」の役割をアメリカに期待する。そして、その結果―。
 ――アメリカは、たしかにソ連に勝ったかもしれない。しかし、冷戦の終結とともに米ソ間の緊張が緩和され、「雪解けの時代」になると、アメリカがもはや「理想の象徴」でないことが明らかとなっていた。(ポール・スタビロン著「アメリカ帝国の衰亡」から。この部分はasaによる引用)

  ・「帝国」を支えるもの~ドイツは自立、日本は?
 戦後、アメリカが「帝国」として存在するために必要だったものは、まず強大な仮想敵・ソ連であり、次に帝国を支える「盟友」だった。その柱はドイツであり、日本だった。
 ――日本はドイツに次いで、第二次大戦後に生まれたアメリカ・システムの第二の戦略的柱である。(略)ドイツはアメリカの後見から独立しつつある。日本はほとんど動かなかった。(「帝国以後」)
 アメリカ「帝国」の崩壊、もしくは衰亡によって、ヨーロッパは自立へと向かい、かつての「帝国」から「国民国家」へと相貌を変えたロシアと接近しつつある。世界は確実にアメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国という多極化へと向かっている。しかし、日本だけは相変わらず、「日米同盟」が日本の安全を守る道だと盲信している。

  ・日本の取るべき道~「沖縄」「原発」という亀裂
 トランプ政権の登場は、まぎれもなくアメリカ経済の衰亡の結果であり、帝国〈=例外主義的な覇権国家〉から一国民国家への変身願望の表れであろう。この結果、世界は一極支配から脱し多極化へと向かう。事実、ヨーロッパもロシアも中国もそう思っている。その中で日本だけが「沖縄」「原発」という活断層を抱えながら(二つとも、既存の路線を変えられないのは「アメリカ由来」であるためだ)、日米同盟を不可侵のものとして奉っている。イスラムの国でありながらNATOに加入したトルコがロシアと連携しても、アメリカは動かなかった(動けなかった?)。沖縄、原発で日本が独自の路線を取ったからといってアメリカが制裁的な動きをするなどとは考えられないし、そう考える材料もない。


帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕

帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕

  • 作者: エマニュエル トッド
  • 出版社/メーカー: 藤原書店
  • 発売日: 2003/04/30
  • メディア: 単行本