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異文化を知り日本を知る~濫読日記 [濫読日記]

 異文化を知り日本を知る~濫読日記

 「時代の風を読む」(山内昌之著)
 
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★★☆☆☆


潮出版社。1400円。初版は200995

筆者は東大大学院総合文化研究科教授。カイロ大客員助教授も務めた経験を持つ。吉野作造賞、司馬遼太郎賞などを受賞。著書多数













 世界の動きを見るとき、米国や、それに続くBRICsあたりで見てしまう。しかし今、世界はどのあたりで激しく動いているかといえば中東、中央アジアが実は大きな比重を占めている。少なくともエネルギー事情でいえば、この二つの地域は外せない。そしてこの地域に大きな影響を与えているもの、それはイスラム教である。だが今の日本人の感性からすると、この大きな宗教圏への理解は驚くほど低い。
 著者はイスラム圏に深い理解を示す大学教授。月刊誌に連載したコラムをまとめた。国際情勢全般を俎上に上げているが、当然のことながらイスラムや中東事情に関してみるべきものが多い。
 「ガザの悲劇と若者の未来」。ガザの人口増加率を1950年当時の日本に当てはめると、現在の人口は5億人以上、平均年齢は15歳になるという。そしてガザの青少年は東京都の6分の1程度の回廊に押し込められて生活している。「殉教の名で正当化し、遺族に弔慰金や年金を出すハマスの勧誘に応じる若者がいるのも不思議ではない」という言葉が説得力を持つ。こうした側面からも、この地域の絶望の深さが分かるのだ。筆者は政治と外交のリアリズムだけでなく、人口と雇用に長期的に目を向けるヒューマニズムを、と強調する。
 「カフカースと国際政治」や「オリンピックと戦争」も、それぞれ「『新冷戦』構造の舞台裏」「ロシアとグルジアの衝突をめぐって」とサブタイトルが付き、中央アジアの今を分かりやすく解説している。「利子のない銀行」というのも、なかなかに面白い。イスラム法では貸した金の金利をとることを禁じているという。ではどうするか。投資先の収益の分け前を利子の代わりに受け取るという。当然リスクがつきまとう。この話、オイルダラーも対象になるというと、国際金融情勢にかかわってくる。イスラム金融の成長率は21世紀に入って年間20%から40%だという。
 「文化遺産はだれのものか」では、視線は京都・知恩院からアルジェのカスバ、コンスタンチノープルの大聖堂に及ぶ。「文化遺産が普遍的に受け入れられる条件は、歴史の変わり目において、破壊や略奪を受けず、それどころか保護や手入れを受けたか否かという点が大きく関わっている」という著者は、タリバンによるバーミヤンの巨大石仏破壊を「誇るべき遺産の否定」としたうえで正倉院宝物を「非道な略奪をまぬがれてきたのである。これは日本人として誇るべきこと」という。
 地球上で日本からもっとも遠い地域、そして少数者の文化(著者によると、登録されている日本のムスリム人口は7000人から1万人)の一端を知ることは、実は日本の姿を見直すいいテキストになるという好例だ。  

              


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