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まがまがしい出自と連鎖~濫読日記 [濫読日記]

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「原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史」(有馬哲夫著)

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 「原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史」は新潮新書。720円(税別)。初版第1刷は2008年2月20日。著者の有馬哲夫は1953年生まれ。現在、早稲田大大学院教授(メディア論)。著書に「日本テレビとCIA」など。













  経済評論家の内橋哲人が「世界」5月号と「日本の原発、どこで間違えたのか」で、電事連が行ってきたさまざまな「抗議」の実態を明らかにしている。それはあたかも「報道規制」を思わせる。原発関連記事について、延々と続く詳細な「指摘」。これは何を意味するか。原発に関しては報道への介入が官民通してあからさまに行われ、行われたマスコミの側もそれを受け入れてしまう空気があったということではないか。それはどこからきているか。

 初の被爆国となった日本では、原発=原子力にはある種のアレルギーがつきまとう、と言われてきた。一方で、資源小国である日本が戦後の経済発展のためのエネルギーをどこに求めるか、という命題で「原発」を選択する人たちがいる。そのギャップをどう埋めていくか。ここに世論操作を生み出す余地が生まれてくる。世論操作を重ねてきた人々、もしくは組織には感覚のマヒが訪れる。このような現象が政官財の連鎖の構造に波及するとき、今日の「原子力ムラ」が生まれたのではないか。


 分かりやすくするため歴史的経過を追ってみる。日本に原発が導入される契機となったのは1953年のアイゼンハワーによる「アトムズ・フォー・ピース」国連演説である。直後に原子力をめぐって世界と日本の情勢は大きく変わっていく。国連演説のすぐ後には沖縄に戦術ミサイルが配備され、翌年初頭に初の米原潜「ノーチラス」が進水する。3月にはビキニで第五福竜丸事件が起き、日本で原水禁運動が本格化する。こうした中で、未来のエネルギーとして原発を日本に導入する方策が練られる。被爆国である日本には反米、反核感情が少なからずある。これを解消しなければ、原発の導入はありえない―。

 米側はここで1人の男に目を付ける。正力松太郎。元警察官僚で読売新聞社の経営者となり、あっという間に部数を増大させた。一方で日本初の民放テレビを握る。一方正力は原発を日本に持ち込むことで政界の頂点を極めることができると野望を抱く。両者の思惑が交錯する。だがここで保守合同―いわゆる55年体制の確立という政界の荒波が、両者を揺さぶる。正力にいったんは頂点への道がほの見えた時期もあったが、結局は鳩山、石橋、岸と政権はつながれ、正力は日本テレビへと帰っていく。

 有馬はこうした歴史のひとこまを米公文書、とくに「正力松太郎ファイル」と題されたCIA文書を読み解くことで明らかにしていく。

 日本に最初に入った原発は米国製ではなく英国製だった。正力はCIAと手を握りながらなぜ英国製原発に走ったか。米公文書と日本の政治の激動を重ね合わせることで、そうした謎も解けてくる。そして「あとがき」で筆者は書いている。

 ――原発、正力、CIAはよく似ている。その存在を賛美することはできないが、かといって否定することもできないということだ。

 フクシマは戦後日本のまがまがしい断面を明らかにした。その断面の構図がここにある。
 

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)

  • 作者: 有馬 哲夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 新書



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