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都会の若者の心象風景~映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」 [映画時評]

都会の若者の心象風景~
映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

 

 最果タヒの詩集をモチーフに映像化した。

 だから、作中でこんな詩が流れる。

 

 都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。

 塗った爪の色を、きみの体の内側に探したって見つかりやしない。

 夜空はいつでも最高密度の青色だ。

 

 美花(石橋静河、原田美枝子の娘)は看護師。女子寮に住んでいる。仕事が終わると自転車でもう一つの職場に駆け付ける。そこはガールズバー。慎二(池松壮亮)は建設現場の日雇い労務者。周りには、少し年上の智之(松田龍平)や中年の岩下(田中哲二)、それに借金を作って返済のため来日したフィリピンの男らがいる。ある日、憂さ晴らしのためガールズバーをのぞく。美花と慎二が出会う。

 数日後、ある居酒屋で美花と慎二は再び会う…。

 しかし、詩の持つ皮膚感覚をモチーフにしたこの作品について、細かいストーリーテリングは不要と思われるのでここまでにしよう。

 

 その後、付き合い始めた慎二と美花はぶっきらぼうな会話を重ねる中で、お互いのバリアを少しずつ消していく。ともに田舎の出身だが、もうそこに帰るところはない。かといって都会が温かく受け入れてくれているわけでもない。作中でもいくつかのあっけなく、無残な「死」が描かれるが、二人の心中にも、根拠のない「死」の不安がいつも渦巻いている。なにかよくないことが起きるのではないか。そんな思いがいつも頭をもたげる。不条理への漠然とした恐怖である。

 ラストで二人は、「朝までにニュース速報で不吉なニュースが流れたら」という会話を交わす(その内容をここで書くと、すべてネタがばれてしまうので書かないが)。その前段にあった「嫌なことも二人で分け合えば半分になる」ことの延長線上の会話である。

 そんなわけで、都会の孤独を生きる二人は、孤独がもたらす心の痛みを共有する。共有することで「痛み」は半減されると信じて…。

 

 作品化されたものは山あり谷ありのストーリーと人間模様ではない。都会で不器用に生きる若者の心の動き、心象風景、心臓の鼓動そのもの、であろう。それらを表現するという意味では、よくできている。前作「舟を編む」を上回る作品を世に問うた石井裕也監督に拍手である。

 

夜空は.jpg

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