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孤独・不条理・ストレスの心象風景~映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」 [映画時評]

孤独・不条理・ストレスの心象風景~

映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」

 

 孤独で、どこか傲慢な、これはなんだろう。不条理とストレスに囲まれた現代人の心象風景、とでもいうべきか。

 クリスティアン(クレス・バング)はストックホルムのある美術館でチーフ・キュレーターをしている。キュレーターは日本語に訳せば学芸員だが、日本でいう学芸員より企画者の色彩が強い。ここでは、ある企画展の責任者を務めている。その企画展とは―。美術館の広場に四角いスペース(スクエア)を設け、そこでは信義と思いやりが何より優先し、すべてのものが平等と公平に扱われる権利と義務を有するという。むろん、信義も思いやりも平等も公平もない社会へのアンチテーゼであり、強烈な批判メッセージとなるはずであった。しかし…

 展覧会の宣伝のため、広告会社の担当者が考えたのは、スクエアの理念を逆転させたアイデアだった。物乞いをする金髪の少女が不安そうにスクエアの中に立つ。爆発が起き、少女は傷つく。そうした危なっかしい動画がYou Tubeにアップされ、瞬く間に再生30万回に達する。同時に、動画は激しい賛否にさらされる。ところが、クリスティアンは、あるトラブルを抱え、この動画をチェックしていなかった。トラブルとは…。

 ある朝、勤務先へと急ぐクリスティアンに女性が助けを求めた。男に追われているという。そこへ血相を変えた男が飛び込んでくる。やっとの思いで男を阻むと、男は「俺はただ走っていただけ」といって去っていく。事情が分からないクリスティアンは、スマホと財布がなくなったことに気づく。ドタバタを仕掛けられ、すられたらしい。

 スマホのGPSで場所を確かめると、貧しい地区のあるアパートにあるらしいことが分かった。部下の入れ知恵で、あるコンビニを返却場所に指定して「返してほしい」と書いた手紙を、該当するアパートの全戸に入れた。多少の脅し文句をつけて。結局、スマホと財布は返ってきたが、濡れ衣を着せられたというある少年の執拗な抗議を受けることになる。

 美術館がアップした動画は世間の激しいバッシングを受け、クリスティアンはキュレーター辞任を決意する。そのための会見を開くが、これもすんなりとは終わらなかった。「チェックが足りなかった」といえば「事前検閲では」と記者から反論があり、「内容が問題だった」という釈明には「表現の自由に限界性を認めるのか」との批判が出た。そんな中で翌日の新聞は、この会見と企画展を大きく取り上げた。結果的に宣伝効果は満点で、広告会社の担当者の思惑通りに事は運んだ。

 こうした話を幹としつつ、美術館の出資者らを対象としたレセプションでの奇妙なパフォーマンス、クリスティアンとインタビュアーとの愛のないセックス、別れた妻の子との葛藤が絡まり、冒頭にあるような「ストレスフルな現代人の心象風景」が展開される。レセプションでのパフォーマンスとは、ある男によって「野生」が際限なく演じられ、ちょっと気取った上流の人々を震撼させるというもので、現代人の心に宿る得体の知れない不安感を影絵のように浮かび上がらせる。

 2017年、スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク合作。監督はスウェーデンのリューベン・オストルンド。カンヌ国際映画祭パルムドールを2017年受賞。

 

スクエア.jpg


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