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手続き法といえど、ほってはおけない~濫読日記 [濫読日記]

手続き法といえど、ほってはおけない~濫読日記

 

「憲法改正とは何だろうか」(高見勝利著)

 

 まずは、「憲法」についての私の基本スタンス。門外漢であり、おそらくはありきたりであることは断るまでもない。

 ――現行憲法について一字一句修正まかりならん、とは思わない。必要であれば変えればよい。ただ、現在世の中に出ている(つまりは議論されている))自民党憲法改正草案、および安倍晋三首相が言う憲法9条改正案には賛成しがたい。したがって、現時点で憲法をいじる必要はないのではないか。

 なお、安倍改憲案についての見解は以下の通り。

 ――自衛隊が違憲でないことを明示する、とのことだが、「戦力不保持」と「自衛のための実力組織」がどのような関係になるのか理解できない。石破茂元自民党幹事長がいうとおり「戦力としての自衛隊」を憲法上認めるということなら筋は通るが…。それが現実的な議論でないというなら、あえて触る必要はない。


 憲法改正の必要性を当面認めないとすれば、憲法改正の手続法についても緊急性がないと思っていた。したがって無関心であった。ところが、なぜか憲法改正のための国民投票法はさっさと出来上がり、施行されている。最初の国民投票法が2010年に、改正法が2014年に施行された。この間、国民的に大した議論があったとは記憶していない。大多数の国民が、私のように無関心であったか、それとも手続法なので似たりよったり、と思ったか。

 とにかく、これではいかん、と思い、一冊の本を手にした。標題にある本である。著者の高見勝利氏は憲法学の専門家で、憲法改正国民投票法にも並々ならぬ関心を持ち続けてきた、とお見受けした。「あとがき」によると、第一次安倍政権で国民投票法が議論された際にこの本を書き始め、政権がとん挫したことでいったんは執筆を中断、近年の安倍首相の改憲熱の高まりの中で再度取り組んだという。

 問題意識の深さを映して、叙述の幅は広い。「憲法を変えるとはどういうことか」に始まり「憲法改正規定はどのようにして作られたか」に議論が移り、ようやく「憲法改正手続法はどのようにして作られたか」に入る。そして「憲法改正手続の何が問題か」「憲法改正にどう向き合うか」へと展開する。著者自身の主張は後半の2章に込められ、基礎知識のある人なら前半の3章は飛ばしても構わない、と思われる。


 というわけで、後半の2章に限って言えば、当然ながら憲法改正のための国民投票法は、公選法とはまるで別個のものである。それはたぶん、憲法と法律との違いによる。法律の上には憲法があるが、憲法の上には何もない。あらゆる権力は憲法によって縛られており、したがって憲法を上回る権力者もいない。では、どのような力によって憲法は変更可能か。主権者たる国民の力の発露によって可能なのだ。この手続きを認めなければ、実力(武力)による革命しか社会を変える手立てがなくなる。

 このことを踏まえれば、さまざまな疑問が浮上する。現行の国民投票法は満18歳以上に投票権があるとするが、これでいいのか。「全国民参加」に近づけるため、もっと引き下げるべきではないのか。公民権停止者の投票権は?(現行法では投票を認めている)。改憲の賛否の主張はどこまで認めるか。そして、最も議論が分かれるところである「最低投票率」は認められるか否か(現行法では最低投票率に言及していない)。最低投票率の規定がなければ、極論すればただ一人が投票し、それが賛成票であったら改憲は成立することになるが…。最低投票率を認めない論拠としては①憲法96条に書いてない②書いてないことを新たなハードルにすれば、違憲の疑いが出る③改憲反対派による「棄権」「投票ボイコット」運動を招きかねない―など。


 国民投票で結果が出た後で無効訴訟が起きた場合、国民投票結果の効力はどの時点で発生するかも、難しい問題だ。仮に憲法9条で集団安全保障への参加を認める、という改憲が成立したとする。そのことを踏まえた政策実施は国民投票結果が確定した時点で可能なのか。その後、無効訴訟が起き、国民投票無効が確定した場合、「集団安全保障への参加は憲法上できない」と国際的に宣言し直すのか。逆に判決確定までは効力が発生しないとすれば、改憲阻止のための訴訟乱発という事態に陥るだろう。


 最後の章「憲法改正にどう向き合うか」では安倍首相の憲法観を批判した。その中で、「権力分立原理の欠如」という指摘はもっともであり、鋭い。

 「手続法」と思っていた問題の、思いのほか深いことに気づかされる一冊。

 岩波新書、820円(税別)。


憲法改正とは何だろうか (岩波新書)

憲法改正とは何だろうか (岩波新書)

  • 作者: 高見 勝利
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/02/22
  • メディア: 新書

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