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「差別」を取り上げた甘口の作品~映画「グリーンブック」 [映画時評]

「差別」を取り上げた甘口の作品~

映画「グリーンブック」

 

 白人よりも白人的な教育を受けてきた黒人と、黒人と変わらぬ環境で育った白人がタッグを組み、過酷な人種差別が残る米国南部を旅する物語。「グリーンブック」は人種差別地域を旅するための手引き。黒人が宿泊できる施設が紹介してある。

 1960年代、ニューヨークのクラブ「コパカバーナ」。面倒な客がいれば力で追い出すトニー・〝リップ〟・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)は用心棒的役割を担っていた。クラブは改装のため一時休業となり、トニーは失業する。生活に困っていたところ、ふとしたことで「ドクター」がドライバーを捜しているとの情報を得る。指定の住所は、なんとカーネギーホールだった。その上階に住むのは、ドクター(医者)ではなく、音楽家の黒人だった。差別主義者でもあったトニーだが背に腹は代えられず、仕事の提案を受け入れる。南部6州を演奏旅行しながら回るという。

 こうして、黒人ジャズピアニストのドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と雇われ運転手トニー・リップは、ジム・クロウ法【注】があったころの南部を旅する。シャーリーは、ステージ上ではそれなりの扱いをされるが、ステージを下りれば過酷な差別が待っていた。

 深夜に車で移動していると、黒人は夜間外出禁止だと警官にとがめられ、差別的な発言に怒ったトニーとともに留置場に放り込まれた。シャーリーはロバート・ケネディ司法長官とツテがあったことから事なきを得たが、差別はなくならなかった。旅の最終日には、演奏会場のレストランでの食事さえ拒否された。たまりかねて演奏を拒否、食事をした街中の居酒屋でピアノ演奏を披露、居合わせた客から喝さいを浴びた。

 フロリダ生まれのシャーリーは幼いころから音楽の才能を認められ、一時はクラシックを志す。ところが指導者から黒人はクラシックでの成功は難しいと諭され、ジャズへと転身した。このあたり、「リベルタンゴ」のアストル・ピアソラと似ている。こうしてシャーリーはクラシックをベースにしたジャズの演奏家となった。一方、トニーはイタリア系の移民。ブロンクスで貧困家庭に育った。全く環境の違う二人に、なぜか友情が芽生える。

 1960年代の米国南部での人種差別というシリアスな問題を取り上げながら、全体の味付けは「甘口」である。これをどうとらえるかで作品の評価は変わるだろう。ただ、観たのが平日だったにもかかわらず満席だったのには驚いた。

製作・共同脚本のニック・バレロンガはトニー・リップの息子。監督・製作・共同脚本ピーター・ファレリ。2018年、アメリカ。

 

【注】1876年から1964年にかけ、南部11州で施行された黒人取締法。


グリーンブック.jpg


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