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前作と比べるのは酷だが、獄はリアル~映画「パピヨン」 [映画時評]

前作と比べるのは酷だが、獄はリアル~映画「パピヨン」

 

 安西冬衛の作で「春」という1行詩がある。

 

 てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った

 

 これだけだが、さまざまな想像を掻き立てる。戦前、父の勤務先であった大連で詩作活動に情熱を注いだが病を得て帰国かなわず、そうした境遇と望郷の念を込めた、とも言われた。間宮海峡をあえて大陸側の呼称である「韃靼海峡」としたことも、その裏付けとされる。そんな時代背景を抜きにしても、この詩には、ユーラシア大陸からはるばる樺太(サハリン)を目指す小さな蝶に託した、揺るがぬ自由を求める精神の発露があるとも受け取れる。

 

 映画「パピヨン」は、脱獄不可能とされた流刑地から脱出をもくろみ、ついに成功した男の物語である。後年、男が書いた自伝小説のタイトルがそのまま映画にかぶせられた。

 1973年に一度映画化。スティーブ・マックィーン、ダスティン・ホフマンのゴールデンコンビで、脱獄映画の金字塔といわれた。さて、そのリメイク版の出来やいかに、と興味津々で観た。

 胸の蝶の刺青から「パピヨン」と呼ばれた金庫破りのプロ、アンリ(チャーリー・ハナム、本名アンリ・シャリエール)は無実の殺人罪に問われ終身刑となり、仏領ギアナへと送られた。そこで、ひ弱な男ドガ(ラミ・マレック)と出会い、カネと引き換えにボデーガードを引き受ける。こうしてアンリとドガの脱獄計画がスタートする。1度目は失敗し2年の独房入り、2回目も失敗、5年の独房。そして「悪魔島」と呼ばれた難攻不落の獄へ送られた3度目は…。

 過酷な独房生活で身も心もボロボロになりながら不屈の精神で自由を求めた男の物語だが、その内面の演技を前作のマックィーン、ホフマンのコンビと比べるのは酷というもの。しかし、牢獄の作りとその生活ぶり、獄中で殺人を犯した男のギロチン処刑の場面などは、これでもかというほどリアル。マイケル・ノア―監督はこれまでドキュメンタリー映画で名を売ったらしく、その辺りは心得たもの、という感じだった。

 自由を求める不屈の魂、といった側面はやや食い足りないが、獄中生活のリアルさは本物だ。

 2017年、アメリカ・セルビア・モンテネグロ・マルタ合作。

 


パピヨン.jpg

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