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曖昧な記憶、断片的な事実~映画「赤い雪」 [映画時評]

曖昧な記憶、断片的な事実~映画「赤い雪」

 

 いったんは迷宮入りした30年前の事件。真相解明に執念を燃やす一人のライターがいた。語られる記憶はいずれも断片的だ。そして、それぞれに秘密を隠しながら絶望的な日々を生きる関係者たち。

 雪の降る日、一人の少年が消えた。嫌疑をかけられた女性、江藤早奈江(夏川結衣)は黙秘を貫き、無罪となった。少年の兄、白川一希(永瀬正敏)は弟を追って雪道を走ったが、途中から記憶はすっぱりと抜け落ちていた。代わりに、赤い雪が記憶を覆っていた。

 早奈江には、もう一つ嫌疑をかけられた事件があった。保険金殺人が疑われた現場には、早奈江と娘の小百合(菜葉菜)がいた。二つの事件を「見ていた」のは小百合と思われた。

 漆職人である一希の日常が変わったのは、事件を追う木立省吾(井浦新)が現れてからだ。彼は小百合の居所を突き止めていた。彼女には宅間隆(佐藤浩市)という男がいた。元インテリ風だが飲んだくれる毎日を送っていた。小百合も、旅館の清掃をしながら客の財布から現金を盗むなど、荒んでいた。

 省吾と一希によって追いつめられた小百合はついに、あの日に見た光景を話し始める。そして一希の、赤い雪に阻まれていた記憶の最後のシーンがよみがえる…。

 入り組んだストーリーだが、説明はほとんどない。その代わり、映像が緻密に重ねられていく。記憶や事実はすべてを語っているわけではなく断片的だ。考えてみれば、私たちを取り巻く事実や記憶はいつも一面的であり、不完全である。それをそのまま映像化した、という印象だ。不完全なピースは、見るものが想像力によって埋めていかなければならない。木立がなぜ30年前の事件を追っていたかも、そうした形で明らかにされる。

 寡黙だが、印象に残る映画である。監督・脚本は新鋭の甲斐さやか。

 

赤い雪.jpg


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