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政治家とは、を考えさせる~映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」 [映画時評]

政治家とは、を考えさせる~

映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」

 

 山高帽に葉巻、貴族趣味の政治家といえば日本では吉田茂だが、そのスタイルは英国首相チャーチルを模倣したという。そして、もう一つまねたスタイルがある。「ワンマン」と呼ばれた政治手法である。しかし、吉田もチャーチルも、ワンマンな手法のゆえに歴史に名を残したともいえる。生きた時代が、平時ではなく非常時だったという前提のもとでの話だが。

 吉田はアジア・太平洋戦争が終わって連合国軍による占領時代が終わり、サンフランシスコ講和条約のもとで日本が再び世界に出ていく時代にかじ取りを行った。チャーチルはそれに先立ち、第二次大戦初期、ヒトラーのドイツが西ヨーロッパへと戦線を転じた1940年5月に首相となった。

 ヒトラーはオランダ、ベルギーを手に入れフランス領に侵攻。パリまで240㌔、大西洋岸のダンケルクを包囲した。英仏軍30万人以上が逃げ場を失った。最悪の場合、全員が死をまぬかれない状況の中で和平交渉に入るか、徹底抗戦を貫くか。チャーチルは究極の選択を迫られた。

 国会は言論の場であり、政治家は言葉を武器とする。最終的な判断は、あくまでも一般大衆に寄り添うことでなされる。苦悩するチャーチルを通して、政治とは何か、政治家とは何かを問いかけた作品である。そうした意味ではとても見ごたえがあった。

 この映画を観た際、客席はほぼ満席だった。何がそうさせたのか。第二次大戦中のヨーロッパを舞台とした遠い話、というにとどまらず、今日の政治に欠けているものを陰画のように浮かび上がらせた作品と思え、そのことが観るものに共感を覚えさせたのではないか。

 チャーチルが地下鉄に乗り、市民にどうすればよいかを率直に問うシーンがある(このシーンが史実に忠実かどうかは別の議論として)。一国の首相といえども、こうした姿勢は必要だろう。そして、決断したなら誠心誠意、訴える。即ち、言葉を武器とする。今日の日本の首相に最も欠けていると思われる部分である。

 チャーチルに話を戻せば、最初に手掛けたダンケルク撤退作戦は民間の船舶860隻を動員し「奇跡」と呼ばれたが(この作戦に関しては近年では2017年に米英仏が共同製作した「ダンケルク」がある)、必ずしも在任中の仕事がすべて高く評価されているわけではない。あくまでも毀誉褒貶の激しい政治家だった、という点は留保しておきたい。

 2017年、英国製作。ジョー・ライト監督。チャーチルの苦悩と葛藤を等身大で演じたゲイリー・オールドマンは見事。


チャーチル.jpg


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