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破滅へと向かう時代を外側から見る~映画「菊とギロチン」 [映画時評]

破滅へと向かう時代を外側から見る

~映画「菊とギロチン」

 

 18世紀に始まり、1960年ごろまで各地で興行した「女相撲」を描きながら、大正末期にアナーキズム運動へとのめりこんだ若者群像にスポットをあてた。

 こう書くと、テオ・アンゲロプロスの大作「旅芸人の記録」そのものでは、との思いに駆られた。ギリシャ各地を巡業する旅芸人の目を通して、第二次大戦から内戦を経て1952年のパパゴス政権誕生までを描いた。社会から疎外された集団の目を通して歴史を見るという構成が「菊とギロチン」に重なる。ただ、歴史のスケールは違っている。「旅芸人…」が描いたのが動乱の10年余であるのに比べ「菊と…」はわずか2年である。

 関東大震災直後の1923(大正12)年。日本は日清、日露戦争、第一次大戦という成功体験を経て大逆事件(1910)、朝鮮併合(1911)により帝国主義への地歩を固めた。それから10年余りたったころである。大杉栄が検挙され、震災の混乱の中で虐殺された。彼の思想を引き継ごうとする「ギロチン社」リーダー中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)は資金を稼ぐため銀行員襲撃や経済団体恐喝を繰り返す。そんな中で中濱は逮捕され、獄中で詩集「黒パン」を編む。古田らは爆弾製造に手を着け、メンバーの和田久太郎(山中崇)は福田雅太郎陸相狙撃に失敗、逮捕。古田らも逮捕される―。

 震災直後の東京近郊に女相撲「玉岩興業」の一座がやってきた。朝鮮出身の元遊女、十勝川(韓英恵)や夫の暴力に耐えかねて家を出た花菊(木竜麻生)ら「力士」はいずれも訳アリだ。そのうえ「風紀紊乱あれば即時中止」と警察当局にも目を付けられていた。日露戦争を体験した兵士らによる自警団・在郷軍人分会も目を光らせる中、ギロチン社のメンバーも取り組みを見に現れる。

 社会に疎外され反権力にならざるを得ない二つの集団はいつしか共感を覚える。花菊はやがて夫に見つかり、強引に連れ戻されるのだが…。十勝川もまたかつての女郎へといったんは身を落とすが…。

 満州国建国という、日本が奈落へと向かった時代はここから10年足らず後である。そんな時代を、時代の内側からではなく外側から見ようという映画の作り手の心意気はうかがえた。

 2018年、日本。監督は4時間半の超長編「ヘヴンズストーリー」の瀬々敬久。「菊とギロチン」も3時間を超す長編である。タイトルの「菊」は主人公の頭文字であるとともに、当時重圧を強めていった天皇制の暗喩であろう。


菊とギロチン.jpg


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