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壮絶なバトルの語り口を観る~映画「主戦場」 [映画時評]

壮絶なバトルの語り口を観る~映画「主戦場」

 

 アジア・太平洋戦争での、いわゆる「慰安婦」問題をめぐる左右の論争そのものを取り上げたドキュメンタリーである(ここでは「慰安婦」にカギかっこをつけた。慰安とは被害に遭った女性ではなく加害の側である日本軍に立った視線であることをはっきりさせるためだ)。

 出演した保守派の人たちは「歴史修正主義」のレッテルを張られたことに抗議し上映中止を求めているようだが、観た限りでは意図的・主観的な編集作業は見受けられなかった。「慰安婦」問題についての論点と、それに対する主張がまんべんなく盛られ、むしろ控えめな演出ではないかとさえ思った(マイケル・ムーアの「華氏119」と比べてみよう。その差が分かる)。

 ただ、「慰安婦」というテーマに沿って左右の論客30人近くを登場させ、主張とともに表情、語り口を追った2時間余りは間違いなく壮観であった。慰安婦=性奴隷とする歴史観を真っ向から否定する杉田水脈、藤田信勝、櫻井よしこ、ケント・ギルバート。これに対して実証的な立場から問題の本質を探る吉見義明、林博史、中野晃一、俵義文。そして「慰安婦」問題にかかわったことからバッシングに遭った元新聞記者植村隆の証言。むろん、この人達の持論については何冊かの著書を読んでいるが、映像であらためてその語り口を含めて観ると、ずいぶん多くの発見がある。

 特に驚いたのは日本会議のバックボーンである加瀬英明のインタビューだった。外交官を父に持ち、外交評論家として知られるが「人の書いた本は読まない」と傲然と言い放つその姿勢は、あきれるほかない。杉田水脈の場当たり的な発言にも、的確な事実を重ねてダブルスタンダードぶりを明らかにした。

 新事実や新しい主張が出てくるわけではないが、「慰安婦」をめぐる壮絶なバトルの連続は見ていてあきない。「慰安婦」問題についての一定の知識を持つ人は思考の整理のために、あまり知識を持たない人は入門編として見ることをお勧めしたい。日系アメリカ人ミキ・デザキの初監督作品。

 

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